第10課 上野駅で
(1)日本には、東京の言葉を土台にした共通語があ
り、全国どこにでも通用する言葉として、広く使われていま
す。けれども、一方で、それぞれの地方には、その地方独特
な言葉があります。その言葉を方言と言います。
方言は、その土地の風土や暮らしと深いつながりがあ
り、その土地その土地の味わいがあります。そして、自分が
生まれ育った土地の方言には、誰もが強い愛着を持っていま
す。
ふるさとのなまりなつかし 停車場の人ごみの中
に そを聞きにいく
これは、石川啄木の短歌です。「ふるさとの方言
が懐かしくてたまらない。私は、その方言が聞きたくて、停
車場の人ごみの中にわざわざ出かけていくのだ。」と言う意
味です。故郷の岩手県を離れ、東京で暮らしていた啄木は、
ふるさとの言葉に特別の懐かしさを感じたのでしょう。
ところで、この短歌で歌われている「停車場」と
は、上野駅のことだと言われています。上野駅は、東京の中
心にあり、昔から東京の来たの玄関と言われていました。東
北地方や上越地方から東京へ出てくる人や、逆に帰っていく
人が、大勢乗り降りする駅でした。ですから、そこへ行け
ば、啄木は生まれ故郷の言葉を聴くことができたのです。
現在も、上野駅の人ごみの中からは、相変わらず
ふるさとの言葉で楽しそうに話し合う声が聞こえたきます。
啄木のように、ふるさとの言葉が懐かしくて、上野駅にそれ
を聞きにいく人が、今もいるかもしれません。
(2)王:ずいぶん混んでいるわね。指定席の切符を
取っておいて良かったね。みんな、青森のネブタ祭りに行く
のかしら。
佐藤:ふるさとに帰る人も、多いんじゃないかし
ら。楽しそうに方言で話してる人が、いっぱいいるから。
王:方言と言えば、中国ほどではないけれど、日
本にも、土地によって言葉の違いがあるわね。関東では「あ
りがとう」と言うのを、関西では「お起きに。」と言うんで
しょう。
佐藤:ええ、どこに行っても、その土地の方言が
あるわ。
王:青森にも方言があるんでしょう。
佐藤:ええ、こんな会話があるそうよ。「度
さ。」「遊佐」ねえ、分かる。この言葉の意味。
王:「どさ」「ゆさ」分からないわ。教えて。
佐藤:「どさ」は「どこへ行くの」って言う意
味。「ゆさ」は「お湯に行く」、つまり「お風呂に入りにい
く。」って言う意味なの。青森は寒い地方だから、あまり外
で長い話をしないんですって。だから、挨拶も短く縮めて言
うらしいの。
王:へえ、そう。方言って、やっぱりその土地の
風土や暮らし方と関係が深いのね。寒いと言葉も短くなるな
んて。